一般的に、大規模修繕工事を行うためには、写真のように建物の周囲に足場を設置して、外壁等の補修工事を行います。工事が終わると、不要になった足場は解体されます。
それにかかる費用は、改修工事金額の約15%前後を占めます。
外壁等の補修工事には必要な足場ですが、無足場工法(ロープアクセス吊足場)が有利な場合があります。例えば、廊下側の外壁が駐車場に面しているマンションでは、無足場工法が有効と思っています。
足場仮設は、上の写真のように建物から約90㎝外側に設けます。従って、下の写真のような駐車場側に足場を設けると、駐車場利用の妨げになります。その結果、工事期間中は代替の駐車場を用意しなければならなくなり、居住者の方へ不便をかけます。また、修繕費用が割高になる原因となります。
無足場工法(ロープアクセス吊足場)を採用することにより、足場仮設費用が軽減され、かつ工期も短縮されますので、修繕工事費が安くなります。
マンションの大規模修繕工事は、春工事か秋工事に行うのが一般的となっています。100戸前後のマンションでは、春工事の場合、3月に着工して6月末に完了し、暑い夏を避けます。秋工事では、9月に着工して12月末に完了し、きれいになったマンションで新年を迎えます。
従って、3月と9月は足場工事が集中して、足場の職人の取合いとなり、価格の上昇や工期の遅延の可能性が高くなります。
そこで、4月に着工して、夏休み前の7月完成の工程を組めば、足場の取合いは少なくなり、価格を安く抑えることができます。また、エアコンの使用制限をなくすように、条件を付けることも可能です。 ゆとりの持てる工期設定は、大規模修繕工事の成功のポイントと言えます。
計画修繕は、一般的には12年サイクルで計画されます。マンションンの寿命を60年としますと、4回大規模修繕工事を行うことになります。
修繕サイクルを少しでも長く設定できれば、トータルの修繕工事費を削減することになります。
修繕サイクルを伸ばすためには、仕様や工法の検討、工事監理の質の向上が求められます。
計画修繕と改修の重要性
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修繕
部材や設備の劣化部の修理や取り替えを行い、劣化した建物又はその部分の性能・機能を実用上支障のない状態まで回復させる行為。
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改良
建物各部の性能・機能のグレードアップ(マンションを構成する材料や設備を新しい種類のものに取り替えることや、新しい性能・機能等を付加することなど)
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改修
修繕及び改良(グレードアップ)により、建築物の性能を改善する変更工事
第1回目の大規模修繕工事で最近、外壁タイルの剥落の発生や浮き(コンクリートにしっかりタイルが接着していない状態)数量の多さが問題になっているマンションが多く見られます。
第1回目の大規模修繕工事では、外壁タイルの浮き数量の割合は、今までの経験から1~2%程度です。ほとんど浮きの無い場合もあり、2%でも浮き数量の多い部類に入りますが、7%や13%に及ぶマンションもあります。
2%以上の浮き数量がある場合、大規模修繕工事に占めるタイル補修工事費の割合が高くなり、そのしわ寄せで、本来やらなければならない修繕を先送りしたり、極端な場合は修繕工事の予算がオーバーとなり、借入するケースもあります。
タイルの浮きの原因は、コンクリート打設時の型枠材料に起因する場合やコンクリート下地処理方法に起因する場合などが考えられます。浮き数量が多い場合には、その原因を突き止め、場合によっては、売主や施工会社と補償交渉をして行かなければならない場合があります。
施工保証も10年を区切りとする場合がありますので、築年数が10年にならない前に、建物の調査診断を行って、施工不良個所を特定しておいた方が良いと思っています。
また、建物の修繕履歴をしっかりと保存しておくことも大切です。写真のように、外壁タイルがはらんでいる場合は、大変危険ですので、速やかにタイルを撤去する必要があります。また、外壁タイルの浮きが心配な場合は、無足場工法(ロープアクセス吊足場等)で調査が可能です。
タイルの浮きと同じようバルコニーや廊下等の天井塗装の剥がれや浮きの発生も問題となります。その原因の多くは、コンクリート下地処理のモルタルの剥がれによるものです。
やはり、施工不良が原因ですので、剥がれや浮き数量が多い場合には、手直しや保証を求めていく場合がありますので、早めの調査診断が必要です。
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